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静岡地方裁判所 昭和49年(ワ)382号 判決

原告

小林忍

被告

八田芳明

主文

被告は原告に対し金五三四万六、六五九円及び内金四八九万六、六五九円に対する昭和四九年一一月一日から、内金四五万円に対する同五〇年五月二八日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを二分し、その一を被告の、その余を原告の負担とする。

この判決第一項は仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し一三一四万二、六八一円及びこれに対する昭和四九年一一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。」との判決を求め、その請求原因として次のとおり述べ、被告の主張は否認する旨答弁した。

一  本件交通事故

(一)  被告はその所有にかかる普通乗用車(静岡五は二八一七、以下被告車という)を運転して昭和四八年七月九日午後零時頃時速約四〇粁で静岡市高松町一二番地の九先の幅員約六米のアスフアルト舗装道路(歩車道の区別はない)を石田街道より登呂方面に向けて進行中、同車左前方を同方向に三輪車に乗つて進行中の原告(当時二才)の後部に接触させ、原告を五メートルほど跳ねとばし後記のような頭部外傷の傷害を負わせた。

(二)  被告は本件交通事故現場付近で前方約三七米の道路右側に駐車していた普通乗用車に気をとられて左側部分に対する注意を怠り被告車を運転した過失により同方向に進行していた原告の三輪車に約六・四米近いたところで右三輪車に気付き急制動をかけたが及ばず本件接触事故を惹起したものである。

二  原告の傷害の程度、治療状況及び後遺症

(一)  原告は本件事故により頭部外傷及び同外傷に起因する慢性硬膜下血腫の傷害を負い、次のとおり入、通院をした。

1  静岡済生会病院に昭和四八年七月九日から同月一七日までと、同月二五日から同月二八日頃まで毎日通院し、同月一八日から同月二四日まで入院した。

2  静岡赤十字病院に自昭和四八年七月三〇日至同年八月一八日、自同年一〇月八日至同月二七日、自同年一一月七日至昭和四九年二月二〇日、自同年五月二七日至同年六月一日、自同年七月一五日至同月二六日の間入院し、昭和四八年八月一九日から昭和五〇年五月九日現在までの右入院期間を除いた期間通院している。

(二)  原告の脳は本件傷害により側頭葉から前頭葉が破壊され、脳硬膜下に慢性的に脳脊髄液が貯溜し脳を圧迫するので、該貯溜液を腹部に流し込むため、原告の皮膚の下に頭部から腹部に通じる管を通し、バルブを取付け右液を下方へ流れるようにしているが、身体の成長に従い、当分の間約三年毎に手術して管を太いものと入れ替えねばならず、又右バルブの作動が不全で貯溜液の流れがつまると、右管を入れ替えなければならない、又前記脳脊髄液の貯溜が将来の何日の日に消滅するか全く不明である、原告は常に生命の不安におびやかされている。

三  損害

前記のとおり原告は被告の前方注視義務違反の過失により惹起された交通事件により、前記負傷を負つたので、被告は自賠法三条により原告がこれによつて蒙つた次の損害を賠償すべき責任がある。

(一)  治療費

静岡済生会病院の入通院治療費は約五万円、静岡赤十字病院の入通院治療費は昭和四九年九月三日現在で一一一万八、五七二円であるが、そのうち後者の治療費残三四万一一九円を残して被告が既に受領した自賠保険金五〇万円とその負担で支払済みなので右治療費残三四万一一九円を請求する。

(二)  附添看護費

原告は前記のとおり静岡済生会病院に七日間、静岡赤十字病院に約一六四日入院し、その間殆んど原告の母小林美恵子(以下美恵子という)と祖母のよしえが美恵子に代つて約二〇日間附添看護した。そこで右附添費二万四、七〇〇円を請求する。

(三)  雑費

原告の前記入院中に紙おむつとか牛乳を購入し、約一万四、五九五円を支出した。

(四)  逸失利益

原告は本件事故に遭つた当時満二才の健康な男子であり、同年令の男子の平均余命は昭和四七年度の簡易生命表によれば七一・〇三年、就労可能年数は政府の自動車損害賠償保障事業損害査定基準によれば一八才から六三才までの四五年間であるが内わに見て二〇才から六〇才までの四〇年とすると、その複式ホフマン式係数は一四・二四八三八となる。

又賃金センサンス(昭和四六年度)によれば全産業年令計の男子労働者の年平均給与額は一四七万五、七〇〇円であるところ、原告は前記後遺症により労働能力の五〇%を失つたので、その逸失利益は次のとおりになる。

(1,475,700円×0.5)×14.24838=10,813,167円

(五)  慰藉料

前記事故の態様、治療経過、後遺症、特に原告が始終生命の不安にさらされていることを総合するとその慰藉料は一五〇万円が相当である。

(六)  弁護士費用

原告は法定代理人を介して静岡県弁護士会所属弁護士鈴木信雄、奥野兼宏及び竹川東に本訴の追行を委任し、手数料一五万円、成功報酬三〇万円の合計四五万円の弁護士費用を支払う旨を約した。

四  結論

よつて原告は被告に対し右(一)ないし(六)の合計一三一四万二、六八一円及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和四九年一一月一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答弁として、

第一項(一)は認める。同項(二)のうち被告に前方不注視の過失があつたことは認めるも、その余は否認する。第二項(一)(二)は不知、第三項中本件事故が被告の前記過失にも起因すること、被告が本件事故につき自賠法三条による損害賠償義務を負つていることは認めるも、その余は知らない。第四項は争う。

旨答弁し、主張として次のとおり述べた。

一  過失相殺

原告は本件事故当時二才の幼児であつたが、母親の美恵子が自宅から近い富士見マートに買い物に行き、父親の小林啓司(以下啓司という)が自宅にいる間に一人で母親を追つて三輪車に乗つて車両の交通の繁しい通称登呂道路をジグザグ進行し電柱のかげから斜に出て来たところを被告車に接触されたものであり、被告が電柱のかげから出て来た原告を発見したときは既に五、六米の距離に迫つていたので、原告の三輪車を避けることが出来なかつたのである。

以上のとおり二才の幼児が三輪車に乗つて交通の頻繁な車道に出るのを放置していた原告の父母の監護者としての注意義務違反が本件事故の重大な要因となつているのであるから、被告は原告側の右過失につき過失相殺を主張する。

二  又原告は本件事故後直ちに静岡済生会病院で診察を受け応急手当を受けたが一時間後には帰宅した。その後二、三日して吐気がするというので同病院で治療を受け、その後同病院に入院して精密検査を受けたが異常が認められず退院した。その後県立中央病院でも診察を受けたが、異常が発見されなかつた。ところが本件事故から約二〇日過ぎて静岡赤十字病院で診察を受けたところ、硬膜下出血の診断を受けて直ちに入院手術を受けたが、その際医師より手遅れだと説明された。

以上の経過より見ると原告の傷害が悪化し、その主張のように入退院をくりかえし、重大な後遺症をのこしたのは、静岡済生会病院の医師の診断に手おちがあり、初期に適切な手当が行なわれなかつたためであると推定され、この医師の過失が被告の過失と競合して原告に損害を与えたのであるから、

原告の損害賠償額の算定につき右の事情を考慮すべきである。

〔証拠関係略〕

理由

一  本件事故

請求原因第一(一)の事実は争いがない。〔証拠略〕を総合すると次の事実が認められる。

被告車は「ニツサンフエアレデイ」と呼ばれる二人乗りのスポーツカータイプの乗用車であり、スピードを出すことを目的としているので、車体は出来るだけ軽く作られ、その為に起る不安定さを防ぐ必要上、座席の位置を低くして重心が下る様設計されていて、ボンネツトが長いので運転者は顔を少し上げ前方を見通すことになり、直近に対する見通しが悪い状況にあるのに、被告は、幅員約六メートルの車両の交通頻繁な通称登呂道路を時速約四〇粁で被告車を運転するに際し、本件事故現場附近で前方約三七米の道路右側に駐車していた普通乗用車に気をとられて左側部分に対する注意を怠り漫然進行した過失により、同方向に向つて三輪車に乗つて進行している原告(二才)に約六・四米近ずいたところで、気付き急制動をかけたが及ばず、被告車の左前部を右三輪車の後部に接触させ、原告を約五メートル跳ねとばし、原告に対し頭部外傷、右肘部及び両足擦過創を与えた。一方原告の母親の美恵子は早朝の新聞配達業務で疲れて寝ている夫啓司を自宅に残し、昼食の仕度のため自宅から約一〇〇米余離れた登呂道路ぞいの富士見マートに買物に行こうとして自宅前の袋小路の私道で三輪車に乗つて遊んでいた原告を認めたので、「富士見マートに行くので待つているよう」いいつけ、右マーケツトに行つたところ、二才の幼児で事理をわきまえない原告は母親を追い三輪車に乗つて前記車両の交通のはげしい登呂道路の左側通行帯の殆ぼ中央を高松方向に向つて進行したため、被告車に接触された。

〔証拠略〕は前掲各証拠に照して採用できず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

なお、被告は、原告が三輪車をジグザグ運転し電柱のかげから斜に出て来たので、五、六米に近ずくまでこれを発見できなかつた旨主張し、その本人尋問において右主張にそう供述をしているが、〔証拠略〕に照して採用できず、他に右主張を認めるに足る証拠はない。

以上認定事実によると、被告車はその構造上近くの見通しの悪い車両であるから、これを運転し交通の頻繁な幅員の狭い歩車道の区別のない道路を進行するに当つては、特に前方をよく注視し、衝突事故等の発生を未然に防止すべき注意義務があるのに、被告は右前方に注意を奪われ、左前方及び側方に対する注視を怠つた過失により本件事故を惹起したのであり、一方原告の監護者である母親美恵子は、二才の幼児である原告が三輪車に乗つて本件事故現場に近い自宅前の私道上で遊んで認めながら、幼児が本能的に母親の後を追う性質のあることを予知し得たのに、「富士見マートに行くから待つているように」と断つて原告をそのまゝ放置し、登呂道路ぞいにある右マーケツトに赴き、幼児が母親を追つて交通のはげしい登呂道路に出ないよう監督すべきであるのにそれにきずかなかつた不注意があり、その不注意が本件事故の一原因となつたことが認められる。よつて本件事故は被告の前記過失と、原告側(被害者側)の過失の競合により発生したものであり、その過失割合は原告側三割、被告七割と認めるのが相当である。

なお被告は原告の頭部外傷が悪化したについては初期治療に当つた静岡済生会病院の医師に診療過誤があり、初期に適切な手当が行なわれなかつたためである旨主張する。〔証拠略〕によれば、原告が本件事故のあつた昭和四八年七月九日初めて診察を受けた静岡済生会病院では頭部外傷、右肘部及び両足擦過創と診断され一日同病院に留つただけで翌日には帰宅し、同月一七日までは通院して治療したが、食べ物を吐くので同月一八日から同月二四日まで入院精密検査を受けたが、頭部外傷に起因する脳の損傷は発見されず、単なる消化不良と診断され退院し、更に同月二八日頃まで通院し、同月二九日静岡県立中央病院で診察を受けたが頭部の異常は発見されなかつたところ、翌三〇日の静岡赤十字病院で眼底検査、レントゲン撮影、超音波検査、翌三一日脳血管の造影検査の結果、左側頭部硬膜下に血腫の存在が疑われ、同日側頭開頭手術の結果同所に脳脊髄液が貯溜しており、そのため側頭棄及び前頭棄の一部が破壊され萎縮していることを発見されたことが認められるが、静岡赤十字病院医師山田央の証言によれば、原告の右傷病は慢性硬膜下水腫又は血腫といわれ、意識障害を伴わない軽微な脳膜の損傷により、硬膜下に脳脊髄液がもれて長い期間かけて硬膜下に貯溜し、右のような症状を呈することがあり、受傷直後或はその一、二週間後でも脳の異常が発見できない場合もありうることが認められるので、前記のとおり静岡済生会病院において初診或はその二週間以内に原告の左側頭部に硬膜下水腫又は血腫が発見されなかつたからといつて同病院の医師に診療過誤があつたということはできず、他に同医師に被告主張のような過失があつたと認めるに足る証拠もないから、被告のこの点に関する主張は失当である。

二  被告の責任

被告が本件事故当時被告車を保有しこれを運行の用に供していたことは争いがないから、被告は自賠法三条により原告が蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

(一)  原告の傷害の程度、治療状況及び後遺症

〔証拠略〕に前項認定事実を総合すると、次の事実が認められる。

原告は本件事故により前記のとおり頭部外傷、右肘部及両足擦過創を負い、且つ、右頭部外傷に起因する慢性硬膜下水腫及び血腫の傷病により、静岡済生会病院に昭和四八年七月九日から同月一七日までと、同月二五日から同月二八日頃まで毎日通院し、同月一八日から同月二四日まで入院した。静岡赤十字病院に自昭和四八年七月三〇日至同年八月一八日、自同年一〇月八日至同月二七日、自同年一一月七日至昭和四九年二月二〇日、自同年五月二七日至同年六月一日、自同年七月一五日至同月二六日の間入院し、昭和四八年八月一九日から昭和五〇年五月九日現在までの右入院期間を除いた期間通院(但し昭和四九年七月二七日からは約二週間に一度の頻度)している。

原告は四八年七月三一日に左頭開頭手術を受け脳硬膜下の貯溜液を除去したが、数日後に再び貯溜液による脳圧が高まつたので、同年八月八日再び開頭手術を受け、右貯溜液を頭の横から皮膚の下を通した管によつて腹中に流し込む硬膜下腹膜吻合術の手術を受けた、その後右管についているバルブの作動が不全となつたので同年一〇月九日管の入替手術をし、同年一一月七日再び左頭開頭手術をしたところ、右脳硬膜下水腫が血腫に変つていたので、その摘出手術を受け、同年一二月二〇日右腹中に通じる管が感染する虞れがあつたのでこれを除去し、右硬膜下に別の管を入れ、これを体外に出して毎日に抗生物質で洗浄し、約一ケ月半後の昭和四九年二月六日右管を首の静脈に吻合する硬膜下心房吻合手術を行い、右静脈を通じて硬膜下の貯溜水を心臓に流しこむ様にし、同年二月二〇日退院した。同年五月二七日から六月一日まで検査のため再入院し、その後同年七月一五日から同月二六日まで右管の交換手術のため入院した。原告の体には左頭部から首の静脈を通じて心臓の中に現在なお管が挿入されており、弁の作用で左頭部硬膜下に貯溜する脊髄液を心臓に流しこんでいるが、身体の成長に従い当分の間は右管を入れ替えねばならず、又右バルブの作動が不全で流れがつまると管を交換しなければならないので、将来なお数回又は十数回の管交換手術が必要である。昭和五〇年五月九日現在右脊髄液の貯溜が将来の何日消滅するか全く不明であり、右管の挿入のため、原告は過激な運動ができず、又側頭部、頸部の皮膚のすぐ下に管が通つているのでその外貌が異常である。原告の左側頭葉等は前記水腫等により破壊されて萎縮し、そのため脳の左半球全体が強い脳波異常を呈しているので、将来外傷性てんかんを引き起す危険がある。昭和五〇年五月九日現在てんかん症状はないが、天気の悪い日は不気嫌で短気であり、時には狂暴性を発揮し、食慾もむらで、喋るのが遅くどもつたりする。水頭症のように頭が大きく体とのバランスがとれず転倒しやすい。右以外には特に知能の発達及び運動機能の障害はないが、前記のとおり脳の側頭葉及び前頭葉が萎縮しているので、将来知能及び運動機能に何等かの障害が生ずる危険がある。

以上認定を覆すに足る証拠はない。

(二)  治療費

〔証拠略〕を総合すると、昭和四九年九月三日現在、静岡済生会病院及び静岡赤十字病院の入通院治療費は後者の治療費残三四万一一九円を残して被告が既に受領した自賠保険金(治療費)五〇万円と自己の負担で支払済みであり、残額三四万円については静岡赤十字病院の承諾のもとに一ケ月五、〇〇〇円の月賦弁済をし、現在約二九万円残つているが、これも引続いて被告が支払う約束になつていること、昭和四九年七月二六日以後の通院治療費は社会保険を利用し、自己負担分は被告において原告側より請求される都度支払つていることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。よつて原告の入通院治療費の請求は失当である。

(三)  附添費

前記認定事実に〔証拠略〕を総合すると、原告は前記のとおり静岡済生会病院に七日間、静岡赤十字病院に約一六四日入院し、その間美恵子が引続き附添看護し、美恵子が休んでいる間約二〇日間は祖母のよしえが代つて附添看護したことが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。そして右近親の看護料は一日一、五〇〇円とするのが相当であるから、一七一日で二五万六、五〇〇円となる。

(四)  雑費

〔証拠略〕によれば原告の前記入院中紙おむつとか牛乳を購入し、約一万五、〇〇〇円を支払つたことが認められる。

(五)  逸失利益

〔証拠略〕に前記認定事実を総合すると原告は本件事故にあつた当時満二才の健康な男子であつたことが認められるところ、同年令の男子の平均余命は、昭和四七年度の簡易生命表によれば七一・〇三年であり、就労可能年数は政府の自動車損害賠償保障事業損害査定基準によれば一八才から六三才までの四五年間であり、その間のライプニツツ式計数は八・一四二五であること、昭和四七年度の労働省発表の「賃金構造基本統計報告」によれば全産業企業規模計年令計の男子労働者の平均年給与額は一一四万三、三〇〇円(内訳 きまつて支給する現金給与額月額七万五、四〇〇円、年間賞与等二三万八、五〇〇円)であることは顕著な事実である。そして前(一)項認定事実によれば原告が前記慢性硬膜下水腫等により、将来の労働能力をどの程度失うかについては現在明らかでないが、前記脳損傷萎縮によるてんかん症発生の危険、知能及び運動機能障害の虞れ等を総合すると少くともその労働能力の四〇%が失われたものと推定するのが相当である。従つてその逸失利益は次のとおり三七二万三、七二八円となる。

(年収1,143,300円×労働能力喪失率0.4)×ライプニツツ係数8.1425=3,723,728円

(六)  慰藉料

前記事故の態様、治療経過、後遺症その他諸般の事情を総合するとその慰藉料は二一〇万円が相当である。

(七)  小計及び弁護士費用

よつて被告は前記(三)ないし(五)の合計三九九万五、二二八円の七割である二七九万六、六五九円に前記(六)の二一〇万円を合計した四八九万六、六五九円の支払義務あるところ、弁論の全趣旨によれば、原告は法定代理人を介して静岡県弁護士会所属弁護士鈴木信雄、奥野兼宏及び竹川東に本訴の追行を委任し、同弁護士会報酬規程に基く相当額の弁護士費用及び報酬を支払う旨を約したことが認められ、右弁護士費用等も本件事故による損害額と認められるところ、その額は前記認容額の約一割である四五万円をもつて相当とする。

四  結論

よつて原告の本訴請求は被告に対し前項(七)の四八九万六、六五九円に右弁護士費用等四五万円を加算した五三四万六、六五九円及び内四八九万六、六五九円に対する本訴状送達の翌日であること記録上明らかである昭和四九年一一月一日から、内四五万円に対する本判決言渡の翌日であること記録上明らかである昭和五〇年五月二八日から各支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、仮執行宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 元吉麗子)

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